ある日…………。
そう、その日が何月何日だったのかまるで思い出せない、本当にある日の出来事だった。
俺は神社の隣を歩いていた。
神社の名前は……
……いや、別に名前なんかどうでも良い……
どうせ俺にとっては「神社」それ以上でもそれ以下でもないのだから……。
そしてその現場を目撃してしまったんだ。どうしてその場を発見してしまったのか、
今でもわからない。どんなに注意深くしていたところで絶対に視界には入らない角度だったからだ。
…………いや。もしかしたら、これが運命ってやつだったのかも知れない。
とにかく、そんなある日の出来事が俺の単調な日常に変化を与えた事だけは確かだった。
 

「ほら、もっと脚を開くんだよ」
雑木林の中、男の声が女を責め立てていた。
男の姿は……良く見えなかった。どちらにしても俺に背を向けているはずだ。
なぜならば、俺は女の姿を正面に捉えていたからだ。
少し大きめの眼鏡をかけた女……少女と形容した方が…………高校生くらいだろう……
……ここの神社の巫女だろうか…………白い服と朱色の袴といういでたちだ。
1本の木に寄り掛かるような形で座り込み、膝を立てていた。
……あ、らっきー。パンティが見えてるぞ。
袴の奥、肉付きのよさそうな腿の付け根に白い下着が見えていた。
……ブラはしていなかった。幼げな顔の割になかなかの大きさの胸元が眩しかった。
……って、おいおい。いくらなんでもそこまで見えているのはなんか違うんじゃないのか?
「……ったくよぅ、下着はつけるなって言っておいたろうがよ」
もう一度男の声。
そこで初めて少女が男に辱めを受けていると言う事に気がついた。
「…………」
少女は答えない。恥ずかしいのか、頬を染めたまま横を向くばかりだった。
「……」
男も乱暴な事はするつもりはないようだ。
我儘な彼氏が彼女の働く神社にまで押し掛けてきた……というカンジだろうか?
もちろんそれは俺の憶測でしかないので実際がどうなのかは判らない。
「いいか、明日もくるからな。下着はつけてるんじゃないぞ」
「…………」
少女は黙したままだ。
「……いいな」
いいかげん痺れを切らせたのか、男の口調が強くなった。
「………………うん、わかった……」
初めて少女の声を聞いた。
思っていたよりも落ち着いた感じの奇麗な声だった。
  
  
…………明日もくる……明日も……くる…………あした………………
男の最後の科白を反芻しながら、
俺は自分の中に生まれた危険な感情を歓迎している事に気づかなかった。
 

<<BACK   表紙に戻る   NEXT>>